転写制御・1細胞トランスクリプトーム

研究分野

  • 新規強心薬の開発
  • 細胞の力学的負荷と収縮性評価
  • タンパク質分解を標的とした薬剤スクリーニング
  • 転写制御・1細胞トランス クリプトーム
  • ミトコンドリア病 治療薬開発

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転写制御・1細胞トランスクリプトーム

心不全における転写制御機構の解明と心不全治療への応用

私達の体は組織によって発現する遺伝子の量や種類が異なり、更に外界からの刺激に対応するために遺伝子の発現パターンが大きく変化します。このような組織特異的な遺伝子発現は遺伝子から遠く離れた「エンハンサー」と呼ばれる領域によって調節されています。近年では組織特異的に遺伝子を発現させるために、エンハンサー領域に対する遺伝子治療の開発が進められています。
ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)は血管拡張・利尿作用を持つペプチド性ホルモンであり、心不全で遺伝子発現が強く誘導され、心不全重症度指標・心不全治療薬として臨床で頻用されています。私達は近年、独自のエピゲノムプロファイルからANP/BNP発現を誘導するエンハンサー領域(CR9)を同定しました[1]。またCR9とともにレポーター遺伝子を組み込んだ遺伝子改変マウスを作成することにより、非侵襲的に心不全進行を評価できるライブイメージングも開発しました。
心不全でCR9エンハンサーが誘導される機序は依然として不明であり、生化学的手法によりCR9領域に結合する転写因子の同定を進めています。CR9領域と結合転写因子はANP/BNPを誘導する治療標的になると考えています。

不全関連
不全関連

心疾患における1細胞レベルでのトランスクリプトーム解析

心臓は心筋細胞だけでなく、線維芽細胞・内皮細胞・免疫細胞など様々な細胞集団から構成されています。心疾患の原因遺伝子や治療標的を同定するには、それぞれの細胞集団での遺伝子発現変化・クロマチン修飾変化を明らかにし、細胞間のネットワークを理解する必要があると考えています。心疾患動物モデルの心臓組織から分散した細胞に対してフローサイトメトリーや1細胞RNAシーケンスを行うことにより、単一の細胞集団、更には1細胞レベルでのトランスクリプトーム解析を進めています。また循環器内科と協力し、心疾患患者の心臓組織からのトランスクリプトーム解析も試みています。それぞれの細胞集団における遺伝子発現変化の過程を明らかにし、治療標的を同定するためのスクリーニング系構築を目標にしています。

トランスクリプトーム解析

[1] Matsuoka K, et al. FASEB J.28:1870-9,2014

担当者 松岡 研